開発秘話 特別編
- 声が聞こえ、蒸れない耳栓
- ジェンダーの小耳に挟んだお話:
女性は4000Hz~の高音域に敏感で、男性は40歳からの聴力低下が早いそうです。
金属加工などの工場での耳栓使用では女性にも配慮が必要ですね。
モスキート音に対応する耳栓はエアトースER:
小学生の母親や女性の方から「モスキート音が消えた!」と評価を頂くようになりました。開発当初から耳栓やオナラ音防止に使えるのではという半分冗談のような案はありました。
最初のきっかけは、2016年の4月に、建築設備綜合協会での「環境設備デザイン賞」発表会用に作成した
小さなエアトースです。
当初のことを思い出し、耳栓としての機能をテストしたのが始まりです。
オナラ防止は、匂いも通すので除外ですが、
耳栓なら、蒸れ防止にもなるかなと。
完成後のエアトースERはこちら
でも結局、暫くは開発をしないことにしました。
開発当初の防音効果が10dB程度だったということもありますが、販売方法や製品化ということもハードルが高かった理由のひとつです。
ところが、同年の7月頃に再び「きっかけ」が訪れたのです。
工事現場や工場内の作業場で、防音パネルやカーテンとして利用したいというお話が、相次いで舞い込んだのです。
主に近隣住民や通行人への対策としてであり、想定内の案件です。ただ、その中で、こんな雑談?があったのです。
「作業場では耳栓をするんだけど、今度は周りの音とかも聞こえなくなり、結構怖いんだよね。結構蒸れるし。」
技能者の方たちは工具の音の変化で状況を判断することも多いらしいのです。単に全体の音が小さくなる耳栓は、周りの声も聞こえなくなるので却って危険にもなり、使いづらいとか。
高周波数対応の耳栓も販売されていますが、高額で1人ずつ配るのは無理らしいのです。
「なるほど! 特定の音だけを小さくして臨場感はそのままにできればいいのか!」
これならエアトースは対応できるかも。
再び開発開始です。
そして、ついにできました。
「聞こえる耳栓」の完成です。いや・・・、正確には「聞こえる耳栓の試作」の完成です。耳障りな1,600Hz以上の周波数帯は減音するけど、声の領域である150~1,000Hz帯域は、殆ど減音しない形状を見つけました。
【電気のこぎりの場合 周波数の高い部分が小さくなり、声のくびれが目立ってきています】
例えば電気のこぎりのギュイーンという耳障りな音は和らぎます。しかし、横で話している声は音量が落ちませんので、相対的に声が通るようになります。
副産物?もありました。音楽もトランペットの高音域やシンバルの、頭の芯に当たるような音が和らぎ、ギンギンのハードな曲も心地よく聞こえます。これで熟年もロックが聴けます!?
前述の建設現場の方や工場関係者の方に見てもらいました。
高評価です。
ひょっとすると、今までの製品の中でトップかも!と思うほどいい感触です。
【ジェット機の場合 周波数の高い音の時間帯が小さくなっています】
さて、後はどのように生産して、どのように売るかですが、販売先は、幸いにして既に売り先が見つかっています。
問題は生産です。
何せ、小さな会社なので、先立つものが裕福ではありません。でも、お話した先から、
「いつできるの? 直ぐに欲しい」とうれしいお言葉。
「あと少し微調整試作を行い、その後生産です。でも資金があまりありません。トホホ」という事情をお話したら
2社の方から
「じゃあ、予約注文するよ」
涙が出ます・・・ (実際にはあまり出ませんでしたが)。
「欲しがっている人はもっといると思うよ。関係業者に声をかけてみたら?」
当面は一般の消費者の方々に直販する力もありません。
そこで、関係する業界で「聞こえる耳栓」を自社で多く消費されるところや、再販して頂けそうなところに当る事にしました。
目標は来年2月中に発売です。
てな感じで、年内は結構楽しい日々を過ごせそうです。【後記:2024年5月】
お陰様で、現在は金属の切削、研磨などの工場や印刷工場でも使われています。
また、聴覚過敏や音に敏感な方がオフィスや通勤、喫茶店で利用されています。
モスキート音で気分が悪くなるとか授業に集中できなかったのが見事に消えた
とのうれしいメールも頂くようになりました。
「声が聞こえ音の変化が判る」「通気するので圧迫感なく蒸れにくい」
など、長時間でも安心して使用できるとの評価です。
感謝です。
一方でJIS規格では問題もあります。
エアトースERは、声が聞こえて、且つ高音を主体とした耳障りな騒音を減音できるのが特長です。
低音~高音まで全体の減音効果を1つの値として表すJIS規格ではこの特長を表現できないのです。
この為、 周波数毎の特性を明示することを推奨している
米国環境保護局推奨の周波数毎測定をシミュレーションしたという経緯があります。
『規格のクリアより使ってもらうこと』
言い訳が多分に含まれた、とても生意気なスローガンです。
声は聞こえる耳栓:エアトースERの紹介はこちら - 新着! 難聴に耳栓?
- テレビ東京のワールドビジネスサテライトで、エアトースERが紹介されました。
一時はサーバの反応が極端に落ちるというハプニングまで起こる反響を頂きました。
そして幸運は更に続き、4月には日本テレビの“ぶらり途中下車の旅”でもエアトースとエアトースERが紹介されたのです。立て続けの放送に、
「どういうコネで取り上げられたの?」と聞かれることがあります。でも実際はテレビ局の方自らがWEBサイトから探し出してくれたのです。
日頃の悪行三昧に神様が目をつぶってくれたとしか言いようがありません。
放送のお陰で、保育園児の声や工場内の騒音を軽減したいといった問合せや注文を多く頂くようになりました。
が、なんと言っても、声の領域はそのままにして騒音領域をカットするエアトースERの注文は群を抜いていました。
更に驚かされたことは、当初の予想外での利用場面が多かったことです。
もともとエアトースERは、建設現場や工場などでの利用を想定していました。
難聴予防で従来から耳栓が使われていましたが、背後からフォークリフトが近づいてきても気づかなかったり、「危ない!」という声が届かなかったりと、耳栓を使うが故の危険があったからです。
しかし、放送後は、パチンコや大音量でのイベントなどにも大きな需要があることがわかりました。全く聞こえなくするのではなく、全体の臨場感はそのままに、耳障りな音だけ落としたいという目的で購入された方々が多くおられたのです。
ただ、本当に驚いたのは、これらともまた違う利用先があったからなのです。
「工場に難聴者がいるのですが、耳栓を使うと返って危険だし、使わないと難聴がひどくなる可能性もあり困っていた時、テレビを見てひょっとして、と思い購入しました。
結果、『耳障りな音が下がるけど、声は聞こえるし、長い間使っていても楽です』という反応でした。一同非常に感激しております」
「実は右耳が難聴気味なんですが、喫茶店やレストラン内の喧騒で、相手との会話に集中できませんでした。試しに使ってみたらなんと、相手の声と自分の声がスムーズによく聞こえるようになりました。気持ちとしても楽になりました。」
これらのメールを拝見した時は、開発してよかったなと少々目頭が熱くなりました(まあ、歳のせいもありますが)。喜んでもらえる製品を作った時って、結構うれしいものです。
で、感慨にひとしきりふけった後、ふと気づいたのは、
“えっ? 難聴で使ったの?”
でした。
その後も、エアコンの音が気になっていたが、テレビのボリュームを下げても大丈夫になったといった声や、普段の生活でイライラが少し和らいだ気がする、といった声が多くの方々から寄せられているのです。
冷静に考えているうちに、理由がわかった気がしてきました。使用頂いた方は、どうも片方の耳が難聴若しくは難聴気味のようです。
“色んな音が一律に入ってくるので、人の声も埋もれてしまってうまく聞き取れない”というのが共通点のようです。恐らく、片方の耳をカバーする為に、もう片方の耳や脳ができるだけ多くの音を拾おうとするのではないでしょうか。
つまり一種の聴覚過敏になっており、その結果、色んな音が混ざって、人の声が埋もれてしまうのではないでしょうか。 - 私は医者ではありません。専攻は物理でしたが、それはそれは成績の悪い、能天気な学生でした。ですからこれは単に私の推測です。
何かが気になると、本来聞きたい音や声が聞こえ難くなるってよくありますよね?
その気になる音を抑えてくれるので、“気にならなくなる”のではないでしょうか。
「ラジオの英語放送で、単語が聞き取り易くなりました。」
といった声も寄せられています。これも、ちょっとした雑音が気になりだすとずっと頭に残り、本来の”音”に集中できなくなるからではないかと。勿論、ご本人の努力が実り始めた時にたまたま付けたから、という見方もアリですが。
エアトースERは医療用途として販売はしておりません。これを使用することで難聴が治ることは恐らくないでしょう。でも、“気になる音が軽減”できることに間違いはなく、心が和らいだ生活を支援することはできそうです。
精神的にリラックスできると、集中力もでてくるのではないでしょうか。
まあ、付けただけではTOEICも期末試験もよくはならないでしょうが。
「電池式のノイズキャンセリングを使っていたけど、これで十分だね!」
という声も頂きました。
いやあ、エアトースってすごいですね。
という自画自賛のお話でした。
ご興味ある方、是非お気軽にお問合せください。
最初は、殆どの人がこの技術を疑いの目でみていました。信じてくれたのは特許庁だけ。
でも次第に道路に面した窓や、作業場を仕切るカーテンなどに使われ始めました。
次に、これを無茶苦茶小さくして耳栓として使えないか、と思い試作してみたのですが、
耳栓としての遮音はJIS規格の1種に合格しない程度でした。
ただ、「音が柔らかくなった」気がします。周波数を見ると1,000Hz以下の声の領域はそのままだけど、それ以上の周波数帯では大きく遮音しています。特定のノイズをキャンセルする「耳栓」としては使えるかもと思ったのです。JISの2種としては使えそうです。
こうしてエアトースERが誕生しました。
後ろをフォークリフトが通る工事現場や、金属加工をする工場など、周りの音や声が大切な役目をする場所で使われるようになりました。
パチンコ店やロックコンサートなどでも使われています。驚いたことには、難聴気味の方にも好評です。
聴覚が過敏な方だけでなく、片方の耳が聞き難い方たちは、いろんな音が全部同じ大きさに聞こえてしまい、
会話がしづらいということがわかってきました。
オフィスや日常生活でも困る場面が多く、高価なノイズキャンセラーや補聴器を使っている方たちもおられます。
「なぜ、今まで気づかなかったんだろう」と思いました。
WHO(世界保健機関)のサイトを丹念に見てみることにしました。公表されている論文も読んでみました。
・・・気づきました! 今まで関心がなかったからなのです(笑)。
欧米の人々は目や口と同様に耳にも気を使っていることに気づきました。
耳栓だけでなく、耳を守るサプリメントの数や販売量が日本に較べると極端に多いのです。
更にもうひとつわかったことがあるのです。
「どうやら、一旦難聴になると直す方法はないらしい」
日本も、欧米並みに「耳ケア」でも先進国でありたい。単に長生きするだけなく、おいしく食べて、行きたいところにいけて、そして楽しく会話(時には面倒なこともありますが)が続けられるように。
吹けば簡単に飛んでしまう小さな会社ですが、「耳ケア」を日本でももっと広めることできないか、
と強く思うようになりました。
大したことはできません。耳に優しいノイズキャンセラーや、騒音を隔離するパネルやカーテンを開発するのが多分、精一杯です。でも、日本で「耳」に関心を持って頂く活動は少しぐらいならできそうです。
そこで・・・
「耳活宣言」です。
蒸れない耳栓:エアトースERはこちら。